お姫様に花束を


「……カノン?」


名前を呼ぶ。


……すると、閉じられていたカノンの瞼がゆっくりと開いていく。


カノンは二、三度瞬きをするとゆっくりと辺りを見回した。


「ここ……」

「病院だよ」


俺がそう教えると、カノンはあぁ……と納得したような声を出した。


「先生、呼んでくるな」


俺はそう言いながら立ち上がった。

……すると、カノンは俺の腕を掴んだ。

俺が少し驚くと、カノンは俺の方を向いてゆっくり口を開いた。


「ちょっと……待って……」

「カノン?」


カノンはゆっくり起き上がろうとする。

俺はそんなカノンを慌てて止めた。


「まだ寝てなって。
今、先生呼んでくるから……」


でも、カノンは首を横に振る。

そして小さく笑った。

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