お姫様に花束を


「カノン……?」


王妃様は病室の扉を開けて恐る恐る声をかけた。

すると、すでに起き上がっていたカノンら驚いた表情で王妃様を見た。


「お母様……?」

「っ……カノン!」


王妃様はベッドに近寄り、カノンを力強く抱きしめた。

王妃様に抱きしめられたカノンはわけが分からないといった表情で王妃様の肩越しに扉の近くに立っていた俺を見た。


「よかった……よかった……!」


泣きながらカノンを抱きしめる王妃様。


「お母様……どうしてここに……」

「あなたが車に轢かれたって連絡が入ったのよ!
それで……」

「え……轢かれた?」


カノンが少し驚いたようにそう聞き返せば王妃様は不思議そうにカノンの顔を見た。


「えぇ……。
ウェルスがそう伝えてきて……」

「ウェルスが?」

「それは王妃様の勘違いでございますよ」


うぉっ……!


突然ウェルスさんの声が聞こえてきたと思ったら、いつの間にかウェルスさんは俺の横に立っていた……。


「お久し振りでございます、リオン様」

「あ……お、お久し振りです……」


ウェルスさんはにこりと俺に微笑みかけると、視線を王妃様の方へと向けた。


「私はカノン様が車に轢かれそうになり倒れられた、とお伝えしたんですよ」

「え……?
そうだったかしら……」

「はい。
ですが、カノン様が倒れられたということに気をとられて勘違いなされたようですね」

「そうだったの……。
あぁ……でも、よかった。
何ともなさそうで……」


王妃様は涙ぐんだ目でカノンを見つめ、優しくカノンの頭を撫でた。

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