お姫様に花束を
「ごめんね……私のワガママに付き合わせちゃって」
「いや……。
買い物に付いてきてほしいって言ったのは俺だし……」
「でも、それは私のためでしょ?」
……俺は何も言えなかった。
すると、カノンは優しく微笑んだ。
「ありがとう」
「え………」
「楽しかった。
わずかな時間だったけど、いろんな発見もできて……本当に勉強になった」
「カノン……」
カノンはふと左側に視線をやった。
すると、この辺りでは滅多に見かけることのない高級車が俺達より少し離れた場所に停まっていた。
「……ウェルスが来たみたい」
「ウェルスさんが?」
「買い物に付き合うっていう約束だし……。
買い物が終わったらまた連れ戻されるわ」
……そうか。
そうだよな……。
「……本当に楽しかった。
ありがとう、リオン」
カノンはそう言って静かに微笑むと……そのまま車の停まっている方へと歩き出した。
……どんどん小さくなっていく背中。
俺にはそれを止める言葉を見つけられない。
止める権利もない。
これが当たり前だ。
なのに……俺はどこか寂しさを感じていた。