お姫様に花束を
「ウェルスから聞いて……ここへ来たの?
私のために……?」
「そうよ。
当たり前じゃない……」
カノンは信じられないといった風に首を横に振る。
「今までこんなことなかったのに……。
風邪を引いたときも、熱を出して寝込んだときも……一度も私のことなんて見向きもしなかったのに……」
「それは誤解でごさいますよ、カノン様」
「え……?」
ウェルスさんが一歩前に出る。
そしてカノンと王妃様の顔を見ると、ゆっくり口を開いた。
「私が言うのも差し出がましいとは思いますが……。
カノン様がお風邪を引かれたときは、国王様も王妃様もたいへん心配していらっしゃいましたよ」
「そんなはず……」
「何せ、公務先から一時間おきに電話をかけてこられるぐらいでしたから」
一時間おきって……。
それは……すごいな。
王妃様の方を見れば、王妃様は少し恥ずかしそうに肩をすくめていた。
「それだけじゃありませんよ。
お二人が公務先にお泊まりになっている時は決まって夜に電話がかかってきたものです。
ロイ様とカノン様の様子をお聞きになるために」
ウェルスさんは柔らかに微笑んでそう言う。
カノンは唖然としながらその話を聞いていた。