お姫様に花束を
「……ロイが……辛そうだったからだ」
「お兄様が……?」
「未来の王になるために、と幼い頃からいろいろ教え込まれ……プレッシャーだってあっただろう。
……私だってそうだった。
だから……継承権を撤廃することでカノンがこの城で王位継承者として堅苦しく暮らすことなく自由に自分の人生を歩んでいくことができれば……それが一番良いと思っていた」
国王様はカノンの顔を見て失笑する。
「だが……やはり自分の子に継がせたいという思いがあってな。
ロイ亡き後は……あの子の分もカノンに頑張ってほしいと……」
……国王様も王妃様も。
ロイ様とカノンのことをとても深く愛している。
……だからこそ。
ロイ様が亡くなられて悲嘆に暮れ……残されたカノンには幸せになってほしいという思いからカノンのためを思って厳しくしてきたんだ……。
「あぁ……でも、本当によかった。
カノンが無事で……よかった」
国王様はカノンをもう一度力強く抱き締める。
……家族だけにしてやろう。
俺は親子三人を見つめながら、そっとカノンの病室を出た。