お姫様に花束を

「……まさか二人とも車の前に飛び出すとはな」

「見てたんですか?」

「いや。
あのゲンっていう人から聞いた」


ゲンさんから……?


「それ聞いた瞬間……分かったよ。
……いや、本当は初めから分かってたのかもしれない」

「……ディラン様?」

「……俺ってすごい小さい人間だなって……思った」


……ディラン様がポツリと呟く。

その発言に俺は少し驚いた。


「……エリック王子やカノンに言われた通り……俺は母親がいなきゃ何もできない……ただのマザコンなのかもしれないな」

「…………………」

「……ウチの母親の王位に対する執着心は異常だよ。
それは息子である俺が一番よく分かってるさ。
……あの人は、自分のために俺を国王にしたいだけだ」

「それって、どういう……」


俺が聞くと、ディラン様は自嘲するかのように笑う。


「国王の母親っていう立ち位置が欲しいだけなんだよ。
ただ……それだけ。
それだけのためにあの人はカノンを苦しめ続けてきたんだ」

「…………………」

「酷いだろ?
……ま、そんな母親の策略に乗った俺も酷い人間だけどな」


ディラン様はそう言いながら……切なそうに失笑した。

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