お姫様に花束を

「城のビニールハウスで育ってるコアブリーはさ、その花束を植え替えたものらしいよ」

「え……?
でも、花束の花を植えかえても……根はないから……」


育たないはず……。

私がそんなことを思っていると、私の考えを察したのかリオンが私の顔を見て小さく笑った。


「俺も同じこと思った。
でも、『奇跡の花』だからってゲンさんは言ってた。
他の場所では全く育たないのに城のあの場所で育ってるのは……前国王夫妻の愛が紡ぎ出した奇跡なんじゃないか……って」


おじい様とおばあ様の愛……。

……うん。

そう言われれば……。

……あの二人、すごく仲が良かったから。

私もいつかあんな風になりたいって幼いながらに思っていたから……。


「……リオン」

「ん?」

「……ありがとう。
連れてきてくれて……」


私がそう言うと、リオンは私の顔を見ながら優しく微笑んだ。


「……やっぱりこの町は……ありのまま残しておかなきゃね」


私はそう言いながら花畑をぐるりと見回す。


「おじい様とおばあ様にとって大切な場所だし……。
……それに……」


私はリオンの目を見つめて微笑み返す。


「私達の思い出の場所にもなったから……。
……ね?」


もうきっと一生忘れられない……思い出が詰まった町。


……すると、リオンはゆっくりと立ち上がって真剣な目で私を見つめた。

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