お姫様に花束を

リオンは先ほどよりも真剣な顔つきで私を見つめる。

そして……


「俺……まだまだ未熟者で、カノンほど強くはなりきれないけどさ。
でも……俺が大学卒業して……カノンを守れるほど強い人間になれた、その時には……」


……リオンが私に向かってゆっくりと花束を差し出す。


「……俺と……結婚してください!」


……目の前がじわりと涙で滲む。

リオンの顔も花束も涙で滲んでよく見えない……。

ただ……感情の趣くままに涙が流れる……。


こんな……

こんな嬉しいことって……


……リオンと会ってから、自分の中にある知らない感情に驚かされてばかり。


……初めてだよ。

こんなに人を好きになったのは……

別れるのが辛いと思ったのは……

会いたいと思う気持ちが心を苦しめたのは……

この人じゃなきゃダメと思えたのは……



全部……全部、リオンが初めて……。



「……カノン……?」


何も言葉を発さない私をリオンが不安げに見つめる。


……私はリオンの手から花束を受け取り……そのまま勢いよくリオンに抱き着いた。

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