お姫様に花束を
城に着くと、私は真っ先に自室に行き服を着替えた。
鏡を見れば、とても憂鬱そうな顔の私。
どんなに辛く悲しい時でも国民の前なら心配を掛けまいと笑顔になれるけど、あの人達の前では到底そんな気持ちにはなれない。
かと言って、行かなければそれこそ私はあの人達の格好の餌食になってしまう。
それだけは嫌。
着替えて外に出れば、ウェルスが控えて待っていた。
「カノン様、顔色が優れないようですが……」
「気にしないで。
体調が悪いわけじゃないから」
ふぅ……と息を吐く。
すると、いくらか気持ちが落ち着いた。
「もうすでに皆さんお揃いで、お食事を始めております」
「……分かった」
ダイニングへ続く大きな扉の前に立つ。
中からは談笑している声が聞こえる。
……本当は入りたくないんだけど。
でも、しょうがない。
ウェルスが扉のノブに手をかけ、開けようとした。
……その時だった。
「本当にどうしたものかしらねぇ。
国王様は本気でカノン様に継がせるつもりなのかしら」
……中から甲高い声が聞こえてきた。
「待って」
そう言って扉を開けようとするウェルスの手を止めさせた。
……私は耳を澄ませて中の声を聞いた。