お姫様に花束を

「よろしかったのですか、あのような事を言ってしまって」

「……怒られるかもね。
国王様が知ったら」

「カノン様……」

「でも、あの人達と一緒に食事を取る気にはなれない。
あの人達と無駄な夕食会をするぐらいなら、他の何かに費やした方がよっぽど効率的よ」


廊下を歩きながらウェルスが心配そうに私を見る。

……ごめんね。

本当、迷惑掛けて。

心の中でそっとウェルスに謝る。


その時だった。


「カノン!」


後ろから誰かに呼ばれた。

振り返ると、私とそんなに年の変わらない青年が立っていた。


「……ディラン」


ディランは私の元へと駆け寄ってきた。

ディランは国王様の妹の息子。

つまり私の従兄弟にあたる。


「カノン、戻ってきてくれよ。
みんな何も本気で言っていたわけじゃ……」

「本気じゃなかったら人の悪口を言ってもいいの?」

「それは……」


黙りこむディランを見て私は小さくため息をついた。


「戻った方がいいんじゃない?
食事の途中でしょ」


まぁ、その食事をすっぽかした私が言えることではないけれど……。

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