お姫様に花束を

会いたかった人に会えて、私の顔はみるみる笑顔に変わっていく。


「ちょっ……え?
何でこんなところに……」


リオンは私を見て驚きを隠せないようだった。

カウンターの中にいるリオンはバーテンダーの格好をしていた。


「そっか……ここ、バーなんだ……」


私が呟くと、リオンはここでバイトをしていると教えてくれた。


「それより……何でカノンが……」

「何でって言われても……」

「……まさか、また抜けだしたとか?」


私が頷くと、リオンは呆れたようにため息をついた。

私はキョロキョロと店内を見渡した。

店内にはリオン一人しかいない。


「リオンしかいないの?」

「あぁ。
店長は今留守にしてるし、客はさっき全員帰ったところ」


ちょうどよかったな、とリオンが言う。

カウンター席に座るように促され、私はゆっくりと腰を下ろす。


リオンは入り口まで歩いていき、『open』とかかっていた札を『closed』にひっくり返した。


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