お姫様に花束を

「私の従兄弟。
……城を出る前にちょっとケンカみたいなのをしてきたから」


あぁ……そういえば何かディランって名前聞いたことある気も……。

あんまりよく覚えてないけど。


「従兄弟が遊びに来てたのか」

「……今日は親戚が集まって夕食会をしていたから」


……そう言ったカノンの顔はなぜか少し暗い気がした。


「ね……リオンにも親戚、いる?」

「いるけど……」

「仲……良い?」


何でそんなこと聞くんだろう……。

そう思ったが……俺に尋ねるカノンの瞳は切なげに揺れていた。

……何かあったんだろう。

直感的にそう思った。


「仲は良いかどうか分かんないけど……。
でも、従兄弟とは昔からよく一緒に遊んでたし。
おじさんとかおばさんも可愛がってくれてたっていう印象はあるけど……」

「……そっか」


カノンの目は……ずっと寂しそうだった。

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