お姫様に花束を
後ろからカノンの声が聞こえたが既に遅く、俺はドアを開けてしまった。
開けた瞬間にカシャッとシャッター音が聞こえ、目の前がピカッと光った。
「よっしゃ!
カノン様のスクープいただき!」
スクープ?
じゃあ、コイツら……パパラッチ……?
「カノン様、お忍びでバー。
イケメンバーテンダーと熱愛か!で見出しは決まりだな!」
「ちょっ……アンタら……!」
俺の制止を振り切り、店の中にいるカノンの元までズカズカ歩いていくパパラッチ。
「カノン様、こんなところで何をしていらっしゃるんですか?」
「度々城を抜け出しているという噂がありますが、それは彼に会うためだったんですか?」
「彼とはどれぐらいの付き合いなんですか?」
「答えてくださいよ、カノン様」
止むことなく焚かれるフラッシュにカノンは眩しそうに目を細める。
カノンが何かを答えようと口を開いた……その時。
「何をやっていらっしゃるんですか!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
俺が慌てて振り返ると、店の入り口にウェルスさんが立っていた。
「ウェルス……!」
カノンがパパラッチ達に囲まれた中心でウェルスさんの名を叫ぶ。
ウェルスさんはパパラッチ達の中に入っていき、カノンをあの輪から抜け出させる。
「急いで城に戻りますよ。
いいですね」
後ろではまだパパラッチがフラッシュを焚かせながら質問をしている。
カノンがコクリと頷くと、ウェルスさんは俺の方を向いた。
「リオン様もですよ」
「え……俺も?」
「さぁ、早く!」
俺はウェルスさんに急かされ、店の外に出てリムジンに乗り込んだ。