お姫様に花束を
「そこで。
この騒ぎが収まるまでリオンをこのコアブル城に匿うことにしました」
「え……ここで?」
俺が聞き返すと、カノンはゆっくり頷いた。
「この状態じゃ帰れないでしょ?」
「まぁ、それはそうだけど……」
城で匿ってもらうなんて……そんな……
「……本当にごめんなさい。
迷惑掛けてしまって……」
「いや……」
「ここにいる間はゆっくりしてもらって構わないから……。
何かあったらウェルスに遠慮なく言って」
ウェルスさんの方を見れば、笑顔を浮かべたまま小さくお辞儀をした。
「それと……。
……この件に関しては心配しないで。
誤解だからきっとすぐに収まるはずよ」
「そう……か」
誤解……。
……確かにそうだ。
俺とカノンの間には何もない。
それは事実のはずなのに……なぜか少し胸がチクリとした。