お姫様に花束を
カノンside

話を終え、リオンが執務室を出ていったあと。

私はデスクの上に置いてある雑誌をもう一度見て、ため息をついた。


「イケメンバーテンダーと熱愛……か」


……誰も付き合ってるなんて言ってないのに。

ただ、異性と一緒にいただけで面白おかしく書き上げられる。


「リオンに迷惑掛けちゃったな……」


私があそこで逃げ出さなかったら……こんなことにはならなかったのに。

……後悔はしている。

でも、後悔すると決まって思い出すのは……泣き出した私を優しく抱き締めてくれた、リオンの温もり――


「……温かかったな」


それは……私が今まで知らなかった温もりだった。



コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。


「どうぞ」


私がそう言えば、顔を出したのはウェルスだった。


「失礼します、カノン様」
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