お姫様に花束を
「カノン……?」
「……リオンの家の窓からは何が見える?」
「え?窓から?」
そう言われて、自分のアパートの部屋を思い出す。
俺の部屋から見えるもの……
「大したものは見えないな……。
見えるものといったらせいぜいご近所さんの家とか近くの店とか……」
「それよ」
「え……?」
それ……?
俺が首を傾げると、カノンは庭を見つめたまま答えてくれた。
「ここからは……城内のもの以外、何も見えないでしょ」
「あ…………」
確かに……そう言われればそうかもしれない。
見えるのは広大な庭ばかりで、その外の景色は何も見えない。
「外から見ればとても大きなお城かもしれないけど……中に入ってしまえば、とても窮屈な世界よ」
お城というものは国民にとっては憧れの場所かもしれない。
でも、ずっとここで育ってきたカノンにとっては……全く違う別の世界なんだ……。