お姫様に花束を
「なのに……誰もそれを分かってない」
カノンは遠くを見つめ、小さくため息をついた。
「ここで一日中書類と睨めっこしていたっていい国になるわけがない。
きちんと国民の生活を見なければ……国民のことを理解しなければ、結局こっちが城の中で何をしたって何も変わらないわ」
……そういえば、一緒に買い物に行ったとき。
カノンはもっと外に出たいと言っていた。
もっと国民の生活を理解したいと言っていた。
……そういうことか。
「だからちょくちょく城を抜け出してるのか……」
「いつもすぐに連れ戻されちゃうんだけどね」
カノンは肩をすくめて小さく笑った。
「でも、国民としては嬉しいよ。
そこまで俺達のこと考えてくれてるなんて」
「……そうかな」
「そうだよ」
「……ありがとう」
カノンは俺の方を見て少し照れくさそうに笑った。
その顔を見て……少し胸が高鳴った。
「……今の顔」
「……え?」
「俺が城に来てから……一番良い顔してると思う。
……って、まだ二日しか経ってないけど」
俺がそう言うと、カノンは少し驚いたような顔をして俺を見つめた。