お姫様に花束を

「良い顔……?」

「あ、いや……。
一緒に買い物行った時と城にいる時とじゃ……何か違う気がして。
外に出てた時はすごい明るい子だと思ったんだけど」

「あ…………」


自分でも思い当る節があるのか、カノンは小さく声を漏らした。

……そして、柔らかに頬を緩めた。


「楽しかったんだ、本当に。
リオンと買い物に行った時。
今までの人生で一番楽しかったの」


そんな大袈裟な……と思ったけど、カノンの表情を見て本気で言ってるんだと分かった。

なぜなら今のカノンの表情は……心から笑ってる気がしたから。

感情を表に出してると感じたから……。

今までの取ってつけたような笑顔とは違う気がしたから……。


「私ね、やってみたいことがいっぱいあるの。
あの買い物はその内の一つかな」


カノンはすごくウキウキしたような表情でそう言った。


「例えば?」

「例えば?うーん……。
そうね、例えばあの芝生の上で寝転がってみたり」


そう言いながらカノンは庭の芝生を指差した。


「え……さっき俺も同じこと思った」

「本当に!?
そうよね、みんなそう思うよね!
だって気持ち良さそうだもの!」


……いつの間にかカノンは、買い物に行った時のようなテンションの高さで俺と話していた。

その顔は本当にとても楽しそうだった。

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