お姫様に花束を
「私、小さい頃にやろうとしたことがあるの。
でも、お母様に止められて……。
だから、大人になったらやろうってその時誓ったの」
「ははっ!
そこまで本気にならなくても」
「でも、絶対気持ちいいと思わない?
今は暑いかもしれないけど、春だったらポカポカしていてお昼寝には最適スポットよ」
「それは……想像しただけで眠くなるな……」
「でしょ!
今度、使用人の目を盗んで絶対寝転がってみせるんだから。
あ、その時はリオンも一緒ね」
「え、俺も?」
「うん!
はい、約束」
そう言いながらカノンは俺に小指を差し出してきた。
「指きりげんまんか。
懐かしいな」
「ふふっ。ほら、早く」
俺は顔に小さな笑みを浮かべながらカノンの小指に自分の小指を絡めた。
「約束だからね」
「ウソついたら針千本だっけ」
「ウェルスに言ったらすぐ用意してくれるわ」
「それ……やめて。
本気で恐ろしいから……」
「ふふっ」
カノンの楽しそうな笑顔。
その笑顔を見てるだけで俺も自然と笑顔になっていった。
城に来てから初めての楽しい時間。
そんな時間はある人の声によって終わりを告げた。
「……お話中失礼致します」
執事の……ウェルスさんによって。