お姫様に花束を


「…………………」

「…………………」


……漂う厳かな空気。

絶対俺がいてはいけない場……。

国王様の二つの目がまっすぐとカノンを捉えている。


ウェルスさんはカノンに国王様がお呼びだと告げた。

そして俺の方を見て……俺も呼ばれていると言われ、国王様の元に来てはみたものの……


「……………」

「……………」


どちらもなかなか言葉を発さない……。


でも、国王様の表情を見るに……かなりお怒りであることは確かだ。


「……カノン」


国王様がゆっくり言葉を発し、俺が話しかけられているわけでもないのに思わず背筋がピンと張る。


「お前は自分が何をしでかしたか分かっているのか?」

「……はい」


国王様の目をまっすぐ見たまま答えるカノン。

その表情はとても強張って見えた。


「ミランダが怒っていた。
お前、夕食会に出席しなかったらしいな」


ミランダ……?

夕食会……?


「顔は出しました」

「それは出席とは言わん。
なぜ出席しなかった」


国王様がそう尋ねても……カノンは何も答えなかった。

少し俯いたまま……黙っていた。



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