お姫様に花束を
「何って……普通の麦茶だけど……」
何か変だったかな……。
いや、でも昨日バイトに行く前に飲んだ時は普通の味だったし……。
「麦茶……」
女の子はキラキラした目で麦茶が入ったコップを見つめている。
「麦茶、飲んだことないの?」
「はい。
いつもはウェルスがブレンドしてくれる紅茶を飲んでいるので……」
ウェルス……?
ブレンド……?
紅茶ってあれじゃないのか。
あのティーバッグに入ってるやつ。
あぁ……でも、そっか。
紅茶にものすごくこだわりがある人なんだろうな。
紅茶好きなんだろうな、きっと。
うんうんと一人で頷きながら納得する。
「あの……お名前伺ってもよろしいですか?」
「あぁ。俺はリオン。
リオン・アルバート」
「リオン……。
素敵な名前ですね」
そう彼女は微笑んだ。
その微笑みは俺が今まで見たことないぐらい眩しい微笑みだった。
な……何だ……。
何なんだ……。
何か……俺とは違う何かを感じる……。