お姫様に花束を

「……どうやらお前は全然反省していないようだな」


……国王様の声が更に怒りに溢れる。


「……カノン様、お答えください。
理由があるのでしょう。
夕食会を放り出した理由が……」


後ろからウェルスさんがカノンに声をかける。

すると、国王様はカノンからウェルスさんへと視線を移した。


「ウェルス、お前は知っているのか。
理由を」

「……はい」

「ならば、代わりにお前が答えよ。
カノンがあのような行動を起こした、理由を」


国王様がそう言うと、カノンはウェルスさんを庇うように一歩前に出た。


「説明したところで、国王様は一ミリもご理解できないと思います」

「……何?」

「あなたには私の気持ちは絶対理解できません。
いつもお兄様と比べられる私の気持ちが。
会うたびに親戚に嫌味を言われる私の気持ちが。
自分の悪口で盛り上がっているのを聞いてしまった私の気持ちが。
誰にも期待なんて全くされていないと面と向かって言われた私の気持ちが。
そんな人達と食事をしたくないと思った私の気持ちが。
耐えられなくて城を抜け出した私の気持ちが。
……国王様には何一つ理解できないと思います」

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