お姫様に花束を


……残された俺と国王様。

俺の緊張はもうマックスまで達していた



国王様はじっと俺を見据えていた。


……威圧感がある。


「リオン君……って言ったかな」

「は、はい……」

「すまないね……恥ずかしいところを見せてしまって……」

「いえ……」

「……昔はあんな子じゃなかったんだが」


国王様は静かにため息をついた。


「……やはりロイを失ったことが大きかったのか……」


ロイ様……。

昔、テレビでチラッと見たことはあるが……どんな方だったのかはよく知らない。


「ロイ様とカノン様は……仲が良かったのですか?」


俺がそう聞くと、国王様は今までの厳格な雰囲気からは想像もつかないぐらい柔らかに微笑んだ。


「そりゃあもう……。
カノンが幼い頃はいつもロイの後をちょこちょこ付いて回ってね……。
それがまた微笑ましくて……。
カノンにとってはロイはとても大きな存在だった。
……そんなロイを失ったカノンの喪失感がどれほどのものか……。
……あの時、もっとカノンの傍にいてやればよかったと何度後悔したか知れん」


……国王様はカノンのことを大切に思ってるんだ。

今の国王様は……ただ娘を思う、父の顔をしている。

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