お姫様に花束を
「友達は?
ババ抜きなら友達とやれば……」
「友達?
……そんなのいないわ」
「え?」
俺が聞き返すと、カノンは高くなりつつあるトランプタワーを見ながら小さくため息をついた。
「小学生の頃はたくさんいたわ。
友達をよくここに招いて……あの広い庭で遊んで」
「だったら……」
「でも、それが本当の友達じゃないって分かったのは中学に入ってすぐの時。
たまたま聞いちゃったの。
友達だと思ってた子達の会話」
会話……?
俺がじっと耳を傾けると、カノンはゆっくり話し始めた。
「私がこの国の王女だから……。
仲良くしておいた方がいいって……親に言われてるんだって。
仲良くしてたら何か良いことがあるかもしれないから……。
その子達の家にとっても……親にとっても」
カノンはふぅ、と小さく息を吐いた。