お姫様に花束を

「君の名前は?」

「え……私?
私は……」


なぜか名前を聞くと彼女は答えるのを躊躇った。

不思議に思っていると、彼女は小さく口を開いた。


「カノン……です」

「カノンか」


どこかで聞いた気もするけど……ま、そんなことはどうでもいいか。


「カノンはこんな時間にあんなところで何をしてたんだ?」

「え……それは……」


少し俯くカノン。

聞いちゃいけないことだったか?

いや、でもな……


「……追われてて……」

「追われる……?
誰に……」

「それは……」


……カノンは俯いたまま黙りこんでしまった。

聞かれたくないことだったのかな……。

けど、追われてるって……。

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