お姫様に花束を
「アイツ、ちょっとひねくれてるところがあるでしょ」
「まぁ……たまに……」
「昔はね、すごく素直で優しくて……よく笑う、明るい子だったんだよ」
……カノンと一緒に買い物に行った時のことを思い出す。
あの時、確かにカノンは明るかった。
でも、城の中だと……
「あの子に友達がいないってことは知ってる?」
「はい……さっき聞きました」
「いろいろあって中学の時から人付き合いがドライになってさ。
そこから少しずつ変わり始めていったんだけど……極めつけは、高校に入ってすぐにカノンの兄であるロイが亡くなったことかな」
エリック様はふいに寂しそうな顔を見せた。
「俺はロイと同い年で幼い頃からよく遊んでいたんだけどね。
カノンはいつもロイのそばにいたよ。
国王様と王妃様はお忙しくてあんまり二人に構ってやれていなかったみたいでね。
ロイも4つ離れた妹を寂しがらせないためにいろんなことをして楽しませていた。
俺はそんな兄妹が大好きでね。
カノンのことは実の妹のように可愛がっていたんだよ」