お姫様に花束を
「小学校に入ってカノンに友達ができて。
これで俺もようやく妹離れできるってロイは笑いながら話してたんだけど……。
……ほら、その友達はさ……本当の友達じゃなくて。
中学生の時、カノンは人とあまり関わりを持たなくなって。
ロイはそんなカノンを心配していた。
カノンにとってロイだけが心の拠り所で信頼できる相手だった。
だけど、カノンが中三の時……ロイの病気が発覚して。
……翌年、ロイは亡くなった」
……覚えている。
ロイ様のお葬式の時……棺に寄り添って泣いていた女の子がテレビに映っていたのを。
あれが……カノン……。
「……それからカノンは心を閉ざした。
いつもそばにいてくれて味方をしてくれ、唯一の心の拠り所だった……たった一人の兄を失ったんだ。
……カノンにとってはもうこの王室にいることが苦痛になった」
「苦痛……?」
エリック様はゆっくり頷いた。
「この国の次期国王はロイだった。
ロイは国民から愛され、信頼され……とても優秀なヤツだった。
ロイにならこの国を任せても大丈夫だと誰もが思っていた。
だけど、そのロイが亡くなった。
すると、王位継承権は妹であるカノンに移る。
当然、カノンにはロイと同じものを要求される。
……だけど、いくら兄妹とはいえカノンとロイは別の人間だ。
いくら頑張ったって同じようになれるわけがない。
ロイにはロイの、カノンにはカノンのやり方がある。
カノンだってカノンなりに頑張っている。
……でも、カノンを取り巻く環境はそれを理解しようとしない」