この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
それから兄さまは、毎日 日新館へと出かけてゆく。
学業は 午前中まで。そのあとは『什』のお仲間達とご一緒にどこかへ出かけて行ってしまう。
私は毎日 家に居て、母さまからお裁縫や掃除の仕方、手習いを教えてもらう日々。
この足を人に見られるのが嫌で、私は手習い所に通わず、母さまからすべてを教わっていた。
もちろんそれが つまらない訳じゃない。けれど。
どんどん、どんどん。兄さまとの距離が遠のいてゆく。
………さみしい。
どうして私の足は、こんななのかしら?
どうして私は、男子に生まれてこなかったのかしら?
男子ならば、健康な足ならば。
どこへ行くにも 兄さまについて行けたのに……。
―――林の家に来たばかりの頃が、懐かしい。
あの頃はまだ兄さまも、私の面倒をよく見て下さった。
私とよく 遊んで下さった。
でも今は、日新館で、外で。
お仲間の皆さま達と、学問や武道を競い合うのが楽しくて仕方がない様子。
私の入る余地など、どこにもない。
さみしい。
取り残されたようで、さみしい………。