この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


「ただいま戻りました!」



勝手口から声をあげ家に入ると、私はすぐ兄さまを探した。

さき子さまからいただいた桜模様の絵ロウソクを、一番にお見せしたくて。

それから、先程の利勝さまのお話を聞いてほしくて。



「兄さま?おられませんか?」



兄さまの部屋を覗いても、そのお姿は見えない。



(どこかお出かけになられたのかしら……?)



家の中を探し歩くと、庭に面した縁側にポツンと腰掛けている兄さまの背中を見つけた。


その姿を見つけて、浮き立つ心持ちのまま声をかけようとしたけど、
その背中がなんだか淋しそうで、なぜか言葉がのどに詰まった。



(………どうしたのかしら?)



「あ……兄さま……?」



ひとつ大きく深呼吸して、そっと声をかけてみる。


兄さまは首だけ振り向いて、私を捉えた。



「ああ、ゆきか……おかえり」



その力ない動作に、声に。

不安を覚えた私は、ゆっくり兄さまに近づいた。


< 120 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop