この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


私も兄さまのとなりにそっと腰掛ける。

心配して兄さまの顔を見上げると、兄さまは私に向けて、その淋しそうな瞳をやさしく細めた。



「兄さま……?どうなされたのですか……?何か、悲しいことでもありましたか……?」



私の問いかけに、兄さまの瞳が、何かに気づいたように大きく瞬く。



「悲しい?……まさか!そんなはずないだろう。こんなにめでたいのに」


「え……おめでたい?」



訳がわからず、ただ言葉を繰り返す私に、少しだけ笑みを返すと、兄さまはどこか遠くを見つめて、静かにつぶやいた。



「まつが嫁に行くんだ。十日後には、この屋敷から出ていく」


「まつが……!?」



驚きはしたものの、私の胸は弾んだ。



まつがお嫁さんになる。



「それはおめでたいことですね!私!さっそくまつにお祝いを言わなくちゃ!」



先程までのことをすっかり忘れてしまい、笑顔を見せて喜ぶ私に、兄さまは何か言いたげな瞳を静かに伏せた。


< 121 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop