この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


まつを立たせると、袂から小さな手拭いを出してまつに渡した。
軽く頭を下げてそれを受け取ると、まつは顔を拭く。

私は心に浮かんだことを口にしてみた。



「……まつ。私ね。この縁談を取りやめてもらうよう、兄さまにお願いしてみる」



まつの瞳が、驚きで大きく見開く。
一瞬、表情が強張ったようにも見えた。


私はそんなまつの不安を取り払おうと、なだめるような口調で続ける。



「まず兄さまにご相談して、そのあとお父上さまのところへ一緒に行ってもらうようお願いするから……」



だから心配しないで?
ずっとここにいればいいわ?


笑顔でそう言おうとした。なのに。



「―――おやめ下さい!! 」



さっきまでと違う、鋭い声でまつは制した。

今度は私がびっくりして、まつを見つめる。

まつは厳しい顔で言った。



「余計なことは決してなさらないで下さい!
そんなことをしたら旦那さまを始め、たくさんの方がたにご迷惑をかけてしまいます!」


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