この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
(いけません。私に関わらないで下さい)
涙をこぼしながら、私は首を振り続ける。
「どうした!? 傷が痛むのか!?」
かがんで私の顔を覗き込むと、傷が痛くて泣いてるのかと心配してくれる。
それにも私は、ただ泣いて首を振るだけ。
泣きじゃくるばかりの私を見つめて、利勝さまはひとつため息をつくと、自分の懐から紺色の手拭いを取り出した。
その端を口で噛み切ると、それを細く裂く。
「足を出せ。とにかく止血しないと」
こんな足を見せるのは恥ずかしくて、ためらいつつも言われるまま足を出すと、
利勝さまは出血してる傷の上あたりに、細く裂いた手拭いをきつく縛りつけた。
「いっ……」
「我慢しろ」
足に利勝さまの手が微かに触れて、恥ずかしさで、涙が一瞬だけ引っ込む。
それからとなりで同じようにかがんでいるおじいさんに、顔を向けておっしゃった。
「ご老人。この娘は俺の知り合いだ。面倒かけて礼を言う。俺が屋敷まで送り届けるゆえ、あとは任せてもらえまいか」
その言葉に、おじいさんも安堵の笑みを返すと、
「もうすぐ陽も暮れるで。早う送ってあげてくんつぁい」
そう言って立ち上がり、帰っていった。
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