この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


利勝さまも立ち上がり、おじいさんに向けて軽く頭を下げると、私を振り返って手を差し伸べてくれた。



「ほら。陽が暮れないうちに帰るぞ。足が痛むだろうが、立てるか?」



………利勝さま。



ご友人がたが見ておられるのに、かまわず私に、何度も声をかけてくれる。



ご自分が明日、厳しいお立場になるとわかってて。



それがつらくて。



「……私なんか、もう放っておいて下さい!でないと明日、罰を受けてしまいます!!」



たまらずそう叫ぶと、



利勝さまの大きな瞳が、さらに大きく見開かれて―――。



「ばかやろう!!! 無念なんか、あとでいくらでも立ててやる!!!」



そう、怒鳴られた。―――怒鳴られたのに。



私の心は あたたかいものに満たされていく。
甘いものに胸が締めつけられる。





「余計な心配なんかするな!! 今はお前のほうが、よっぽど大変だろうが!!」



ひどく腹を立てた様子で、私を叱ってくれる。

次から次へと溢れてくる涙が、やけに温かく感じた。




――――ああ。どうして。どうしてこの人は。



いつも泣きたくてたまらない時に


私を助けようとしてくれるの………?




< 142 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop