この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
溢れる涙を拭いながら、それでも私はかたくなに首を振り続けた。
「……帰れないんです。私……」
帰れない。
あれだけまつを傷つけて。
まつに合わせる顔がない。
どうしていいか、わからないの……。
泣いてばかりの私に、利勝さまが再度ため息をつかれるのがわかる。
そこにご友人がたが近づき、利勝さまはそちらを振り向かれた。
「ああ、すまない。こいつ、八十の妹なんだ。八十の家まで送るから、俺はここで別れるよ。
悌次郎、今日はありがとな?」
悌次郎と呼ばれたお方は、身体がわりとがっしりした方だった。よく日に焼けた肌が、活発そうな印象をもつ。
「ああ……わかった。大丈夫か?手を貸さなくて」
悌次郎さまがそう尋ねると、利勝さまは頷く。
「それから……このことは、明日必ず自分で言うから」
利勝さまが言うと、おふたりも頷いた。
「わかってるよ。聞かれたら俺も見たままを言う。
“やむを得ない事態だった”とな」
利勝さまは目を細めて、頬を緩めた。
「すまん」
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