この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
もうひとりのお方も利勝さまに近寄ると、きれいにたたまれた、白い清潔そうな手拭いを差し出して下さった。
「これを 傷口に巻くといい」
「井深。……すまない。後で必ず返すから」
「いいよ。気にするな」
気さくに笑ったあと、井深さまは私のほうにお顔を向けて一揖された。
(………優しい笑顔)
何も心配しなくていい。そうおっしゃってくださってるような………。
「ありがとうございます……」
私も地べたに腰を下ろしたままの格好だったけど、できるだけ深く頭をさげてお礼を述べた。
おふたりも無言で頷く。
(………よかった。おふたりとも親切な方達で……)
おふたりと別れたあと、利勝さまは 井深さまからいただいた手拭いを、私の傷ついた足に巻いて下さった。
「お前はしょっちゅう、足にケガをしているな。
本当に呆れた奴だ」
そう つぶやいて。
その響きが いつもと違ってやさしいから、なんだか余計に緊張してしまう。
足に触れる利勝さまの手にも、胸が騒いで落ち着かない。
そうして手拭いを結び終えると、利勝さまは私の顔をまじまじと見た。
「お前の顔、だいぶひどいぞ。ちょっとは拭いたらどうなんだよ」
と、いつもの利勝さまの口調に戻られる。
.