この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
表で待っているのが私だと聞かされていなかったのか、訝しそうなお顔で姿を現した利勝さまは、私を見たとたん、さらに眉をひそめた。
「どうしたんだよ。もう日が暮れるぞ」
「あの……私。これをどうしても、利勝さまにお渡ししたくて……」
おずおずと、藍色の手拭いを差し出す。
「このあいだ、利勝さまの紺色の手拭いをダメにしてしまったので、そのお詫びです」
利勝さまは驚いたお顔をなさってる。
「あら、きれいな色ね!」
横からさき子さまが、そのお顔を覗かせた。
(―――受け取って下さい。早く受け取って)
そう願うけれど、利勝さまの手は伸びない。
ひどく不機嫌なお顔をされて、ぶっきらぼうにおっしゃった。
「あんな汚れたもの、くれてやるって言っただろ。
新しいのを返す必要なんかない。
それに返すなら、俺にじゃなく井深に返したほうがいい」
目をそらされて、そう拒まれてしまった。
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