この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


―――空を見上げれば。西の彼方に、橙色が沈んでゆく。


代わりに藍色が、東から静かに空を包みこむ。


目の前を歩く利勝さまの背中も、その藍に染まる。



利勝さまにあげた手拭いの色。
とてもきれいで切ない色。



東の空には、満月より少し欠けた立待月が、明るく光りながらぽっかりと浮かんでいる。



そして藍色の空を彩るように、星がちらちらと瞬く。



月に照らされて白く浮かび上がった雲が、ゆるく星空の中を漂っているのを見つめて、私は遠い記憶を呼び起こしていた。





………あの時と同じ。



初めて利勝さまと出会ったとき。



違うのは、あの頃よりも背が伸びて、たくましくなった後ろ姿。



背負ってもらった時に 気づいてた。



利勝さま、あの頃より筋肉がついて、首も腕も太くなった。


背中も、私を軽く受け止められるくらい、うんと広くなって。



目の前にいるのは、もう細く華奢な子供じゃない。



私の心に、痛いほど『男性』を 意識させる。



ドキドキさせる、男の子………。



月明かりに照らされるその手を、つなぎたい と 思うのは、私の叶わぬ 夢ですか?



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