この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
利勝さまの後ろにも、数人のご友人がたが続く。
その中に見知ったお顔を見つけて、私は立ち上がった。
「井深さま!悌次郎さま!」
名を呼ばれて振り返るおふたりは、互いのお顔を見合わせる。
そんなおふたりの前まで近寄ると、お辞儀してから微笑んだ。
「お忘れでございましょうが……。私は去年の初夏のおり、田圃の道端に転んで、ケガをして泣いていた者にございます。
その節は と…雄治さまとご一緒に、おふたりに助けていただきました。
井深さまには、手拭いまでいただいて……」
ああ、と井深さまは思い出されたのか、以前見せて下さった時と同じような笑顔をなされた。
「こちらこそ。新しい手拭いまで用意していただき、かえって気を遣わせたね」
「いいえ。あの時はろくなお礼も申し上げられず、大変失礼いたしました。
悌次郎さまも。本当に助かりました」
おふたりに深々と頭を下げると、悌次郎さまも照れた笑いを返して下さった。
『遊びの什』で兄さまとご一緒だった、伊藤 俊彦さまもおろた。
幼い頃から美少年だった俊彦さまは、今は凛々しい若者に成長されていた。
兄さまとよく一緒におられるから、すっかり顔馴染みとなっている俊彦さまは、私と目が合うと、軽く会釈をして微笑んで下さる。
私は通り過ぎる皆さまにお辞儀をして見送った。
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