この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
「やった!雄治!」
兄さまが拳を突き上げる。そのお顔は満面の笑みだ。
利勝さまも起き上がり、悌次郎さまの手を引っぱって立ち上がらせると、得意そうにおっしゃった。
「見たか悌次郎!柔術では負けても、相撲じゃ負けんぞ!」
口や顎についた土を手の甲でぐいっと拭うと、悌次郎さまも負けじとおっしゃる。
「言ったな?ならばもう一度だ!」
「ようし!」
そんなやりとりで再度組み合うおふたりも、まわりで応援する兄さま達も。
みんなみんな、笑顔を見せている。
――――初めて見た。
あんな笑顔の利勝さま。
いつも私の前では怒ってばかりで、
利勝さまの笑顔なんて、
口角を少しあげるくらいのものしか見ていなかったから。
それなのに、ほら。
あんなに元気に、大きなお口を開けて。
あんなにお顔をくしゃくしゃにして。
あんなに生き生きと、笑ってらっしゃる。
――――利勝さまの笑顔。
こんなに。
こんなに素敵な笑顔だったなんて。
こんなに胸が締めつけられるほど、
涙が出そうになるほど。
利勝さまの笑顔を見れて嬉しいなんて。
.