この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
「も、申し訳ございません!とんだ不調法をいたしました!
あの、玄関からお声をかけさせていただいたのですが、どなたのご返事もございませんでしたので……!」
しどろもどろ謝ると、利勝さまは短くため息をつく。
「………何の用だよ」
縁側に腰掛け足をぶら下げたまま、不機嫌そうにお顔をそらせる。
まるで私の顔など、見たくもないというように。
(………どうしよう)
私また、利勝さまを怒らせたのかもしれない。
当たり前よね。こんな不作法な真似して。
「……あの、私。すぐこちらに伺うよう、兄さまに申し付けられたものですから。
てっきり利勝さまが、どこかおケガでもなされて、難渋しておられるのかと……。
でもそんなご様子もお見受けられないようですので、安心いたしました」
そう言ってみたけれど、利勝さまはそっぽを向いたまま。
「八十か……余計なことを」
そうつぶやく、不機嫌な声が聞こえただけ。
………なんだかいつもと違う。
不機嫌な態度はいつものことだけど、いつもより冷たいというか、重苦しい空気がまわりを包んでいて、近づけないというか。
………私、本当は。
この場に来てはいけなかったんじゃないのかしら………?
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