この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


………どうして兄さまは、このことを知っておきながら、私に利勝さまとさき子さまのところへ行けとおっしゃったのでしょう?



私なんかがおふたりをお慰めすることなど、けしてできやしないのに。



だって、私は知っている。



おふたりがどれだけ、雄介さまを慕っていたか。
どれだけ兄君が大好きだったか。

そして雄介さまも、どれだけおふたりを慈しんでいたことでしょう。



それがわかるからこそ、中途半端な慰めは、失礼にしかならないというのに。





………涙で歪んだ視界に映る、利勝さまのお姿。



こちらに背を向けたまま、縁の上で再び膝を抱えている、そのお姿がとても淋しげで。



胸が 締めつけられる。



傷ついてほしくなんかないのに。

笑っていてほしいのに。




< 212 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop