この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
掴まれた私の手は、それよりひとまわり大きい利勝さまの手に包まれて。
冷えた背中とは正反対のその熱さに、また 涙がこぼれた。
………あたたかい。
ちゃんと生きてる温かさ。命の温かさ。
「………あにうえ」
利勝さまの手に、力が込められる。
「兄上……っ」
強く握られた痛みは、利勝さまの心の痛み。
いいえ。
利勝さまの痛みは、きっと私が想像するより、はるかにつらい。
もっと。もっと強く握って下さい。
そして その痛みを、私に分けて下さい。
利勝さまの背中が、小刻みに震える。
その口から鳴咽が漏れる。
「……兄上……っ。兄上っ!兄上ぇ!!
なんで死んじゃうんだよ……!! なんで帰ってきてくれないんだ!!
なんで……なんで……っ!!
ちくしょう……!! ちくしょうっっ!!! 」
――――吐き出された言葉は、
私の胸をさらに締めつけて涙を溢れさせる。
心に流れ込んでくる、利勝さまの想いがせつなくて。
大好きな兄上さま。
雄介さまを見上げる利勝さまのお顔は、いつも紅潮した頬と輝いた瞳に満ちていたことでしょう。
憧れの人。尊敬してた人。
そして 自分を一番 理解してくれた人。
もう いない。
この世のどこにも。
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