この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 






………どれくらいのあいだ、こうしていたことだろう。





気がつけば、利勝さまの鳴咽は聞こえなくなっていた。



代わりに背中から聞こえる利勝さまの鼓動が、私の耳に心地よく響いていた。



………ああ。



安心する。このあたたかさ。



……命の鼓動……。



心地よいその音にだんだん気持ちが安らぐと、

私は自分がいかに はしたない行為をしでかしたかに気づいた。



頭からいっきに血の気が引いてゆく。

身体が 硬直する。



(………私ったら!私ったら なんてことを!! )





「……おい。泣き止んだか?」



――――ドキン!!!



いつもの利勝さまの 不機嫌そうな声。



「はっ……はいっ……!! 」



私ったら!私ったら、なんてバカ!



利勝さまに泣いてもらうつもりが、

利勝さまはとうに泣きやんでいて、

私が泣きやむのを待ってもらっていたなんて!



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