この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


その藍の色は、二年前に渡した時より少しばかり色褪せていた。


利勝さまがちゃんと使ってくれている証拠。



うれしい反面、けれどそれを差し出された意味がわからなくて、ただポカンとそれを見つめる。



すると、利勝さまがおっしゃった。



「……顔。拭いたほうがいいぞ。まあ、お前のひどい顔は見慣れてるけどな」



言われてからやっと、あわててそれを受け取り顔にあてる。


急いで顔を拭きながら、心の中で軽く安堵した。




よかった。いつもの 利勝さまだ………。




利勝さまのお顔には、袖で拭われたのか、涙の跡はなかった。



私のほうがだいぶ泣いていたのね。
なんだか恥ずかしい。



「貸すだけだぞ。あとで ちゃんと返せよ」


「わかっております。きちんと洗ってからお返しいたします」



私がいつもの調子で答えると、利勝さまはふっと目を細めた。


< 219 / 466 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop