この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
利勝さま………。
結局……本当にお名前しか 聞かせてもらえなかった。
………また、会えるかしら?
利勝さまのお姿が見えなくなるまでしばらく見送ったあと、ため息をひとつついて、門をくぐり家の中へ入ろうとした。
と、そこへ。
「――――ゆき!」
その声に呼ばれて、私は振り返る。
息を切らしながら走って門をくぐり抜けてきたのは、大好きな 八十治兄さま。
(兄さま、私のことを探しに出ていて下さったんだ……)
うれしくて、私は兄さまに近寄った。
「兄さま………!」
「この、馬鹿者!!」
開口一番にそう言われ、びっくりして目をつぶる。
こんな兄さま 初めて。初めて、叱られた。
「使いに出て、迷子になったそうだな!? どうして俺が戻るまで待てなかったんだ!?」
「も、申し訳ございません……!」
あわてて頭を下げるも、兄さまはたいそうなため息をつかれて、
「無事に戻ってきたから、よかったものの……!
父上もお継母上もみな、帰らぬお前を心配していたのだぞ!?」
眉間に深い溝を作り、お腹立ちなのは 明らか。
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