この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
ドキン、とした。
そのまだ哀しみの抜けない笑顔に、胸が苦しくなる。
私が涙を拭い取り、お借りした手拭いを懐にしまうのを見届けると、利勝さまはおもむろに立ち上がった。
「俺はもういい。それより、中に入らないか?」
「え……っ?」
言葉に驚いて顔をあげると、利勝さまは縁側の後ろの障子をスッと開ける。
「ここから入っていいから、母上と姉上を慰めてやってくれないか。
あの気丈なふたりも、兄上のことは相当こたえているんだ」
――――あ……っ!
私ったら また!
くら子さまもさき子さまも、けして外出されてた訳じゃないんだ。
雄介さまの訃報に、哀しみで塞ぎ込まれているんだわ。
それなのに 私ったら!
利勝さまのことばかりで、おふたりのことにまで頭が回らないなんて!
家の中におられるのなら、先程のことも、もうご存知かもしれない。
そう思ったら、いまさら悔やんでも遅いけど、本当にとんでもないことをしたと心の底から後悔した。
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