この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
お部屋に入り 顔をあげると、くら子さまはきちんと端座して私に微笑んで下さっていた。
………よかった。
おふたりのご様子をうかがう限りでは、先程のことは知られてないみたい。
私は心の奥底で、こっそりと安堵する。
雨戸は明かり取り程度にしか開けられていなくて、薄暗いせいかくら子さまのお顔が、少しおやつれになって見える。
そしてくら子さまの目の前に置かれていたのは。
――――懐紙の上にのせられた遺髪と、血と煤で黒く汚れた袖の切れ端………。
ドキン、とした。
あれは 雄介さまの……。
思わず目が釘づけになる私に、くら子さまは淋しい微笑を見せる。
「……こうなることは、覚悟していたのです。
けれど、いざ目の前に突きつけられるとダメね。
何をする気も起きなくて……」
「無理もございません。大切なご嫡男を亡くされたのですから……」
私の言葉に、くら子さまは袖の切れ端を取り上げて、それを愛おしむように両手で包みこむ。
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