この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


「……仕方ないのよ。雄介も、雄治も。
あの子達は私の子であって、私の子ではないのだから。

あの子達は会津藩の子。武士の子なの。

忠義を前にして、いかに命が軽いものか、そう誰よりも厳しく教えてきたのは、他でもない私なのだから。

あの子は自分の使命をきちんと果たしたのよ……」


「くら子さま……」



なんてお言葉をかけたらいいのかわからない。



くら子さまは袖の切れ端を胸にうずめるように抱きしめる。



愛しいわが子を抱きしめるように。


使命を果たしたことを(ねぎら)うように。



さき子さまもまた、泣き腫らした目をしておられる。



………私は結局、そんなおふたりをお慰めする言葉を、ひとつも言えないままでした。



けれどおふたりは、「来てくれてありがとう」と微笑んで下さいました。







「それでは 失礼します」



上がらせていただいた縁側から帰ろうとする私を、さき子さまが見送りに出て下さった。


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