この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


「アン、ドウ、トロア、カアトル!」

「アン、ドウ、トロア、カアトル!」





………あ。何かの号令かしら?聞き慣れない不思議な言葉……。



「一列横隊に 散開!」







桜の花も咲き誇る頃、私はさき子さまとお城の北側の本一之丁、桜ヶ馬場まで桜見物に来ていた。



見上げるとすぐそこには、満開の桜に囲まれたお城の壮麗な姿。



そして堀の向こうでは、利勝さまや兄さま、白虎隊の皆さまが、藩兵の方がたとともに軍事調練を受けているんだわ。





利勝さまも 兄さまも。きっと今頃、そのお顔を輝かせて、はりきって調練を受けてることでしょう。



私はそれを、少し哀しい気持ちで思った。



「フランス陸軍式とやらの号令はおもしろいのね。何を言っているのか、全然わからないわ」



となりにいたさき子さまも、聞こえてくる掛け声に眉根を寄せる。



桜を見に来たというよりは、調練の様子に耳を傾けに来たという感じで、私達はしばらくその場で風に運ばれてくる声や音に、利勝さまや兄さまの気配を探した。


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