この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜
 


兄さまは笑顔でそれを押しとどめて、



「継母上、落ち着いて下さい。その前にお願いがあります。
出陣の日のために、私に軍服を作って下さい」


「まあ……軍服ですか?」



母さまは目を丸くする。

二百年以上も天下大平の世が続き、戦争でさえ不慣れなことであったのに、
軍服などという、見たことも聞いたこともないものを作って欲しいと言われ、
母さまのお顔に困惑の色が浮かぶ。



「はい!我々は連日、フランス陸軍式の軍事調練を受けております!

出陣の時もみな洋式の軍服で出立するので、それを継母上に仕立てていただきたいのです!」



紅潮して瞳を輝かす兄さまに、母さまもためらいがちでしたが微笑んで頷かれました。



「……わかりました。では、その軍服とやらを急いで仕立てましょう」


「ありがとうございます!! 」



そうお礼を述べて、満面の笑みを浮かべて喜ぶ兄さまの姿は、とてもこれから戦地へ向かうようには思えませんでした。



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